◆はじめに

カウンセリングでは、患者さんのお悩み症状が悪化するのはどんな状況の時か、という質問をすることがあります。

もし悪化する状況があれば、そこをさらに深掘りするためにお話を伺っていきますが、中には「特定の悪化状況がない症状」や「不規則な症状」というものもあり、東洋医学ではこのような場合を、「脳の誤作動」と捉えることがあります。

今回は「脳の誤作動」について東洋医学な視点から書いていきます。

◆脳の誤作動が見られる症状にはどんなものがあるか

脳の誤作動と聞いて、脳に重篤な病気があるのではないかとご心配される方もいらっしゃいますが、これは「脳が勘違い」することで症状を起こしている、という状態のことを指します。

具体的には以下のようなものがあります。

＊睡眠障害

寝る時間になっても眠くならない、途中で起きてしまう、浅眠など

＊更年期症状

暑くないのに急に暑くなる（ホットフラッシュ・のぼせ・ほてり、など）

＊脳から出るホルモン分泌の異常

ホルモン値が基準値より高い、ホルモンの分泌調節が上手くいかない状態（性腺刺激ホルモンFSH・LH・PRLなど) ※状況による

＊中長期間、持っている症状

痛みや自律神経症状（動悸・ヒステリー球・パニック症状など)急に症状が出現する、など

＊その他(胃腸症状・呼吸症状・耳鳴り・めまいなど)

◆なぜ脳の誤作動が起こるのか

脳の誤作動が起こる要因としては以下のことが考えられます。

①    脳の興奮

脳の興奮というのは、様々なことが原因で起こりえるものです。

精神面では精神的ストレス、不安、怒り、悲しみ、緊張など

物理的なものでは、PCやスマホなどのブルーライト、考え事が多い、心配事が多いなど

上記のようなことにより、脳が休息できない状態が長期間続くと、脳は興奮し続けてしまい、これが脳の誤作動へと繋がります。

②　昼夜逆転

人の体には、朝になると活動し、夜は休むというサイクルが組み込まれています。

当直のある仕事や夜勤専従者などは、体のサイクルが乱れて脳の誤作動を起こしやすくなります。特に昼夜逆転の生活をしている方は、本来体を休める夜の時間に脳の興奮が起きるため、睡眠状態が悪くなる傾向があります。(寝付けない・夜中起きてしまう・朝起きて疲れているなど)

③　身体的変化

女性、男性ともに加齢による身体的変化というのは避けられないものです。

特に更年期あたりは、女性は生理不順～閉経、男性は精力の減退、つまり生殖能力の低下が見られます。

生殖能力の調整は、脳が指令を出すことで成り立っています。

生殖器が働かなくなってきたのに脳が指令を出し続ける、ということが起こると、その指令が脳を興奮させ、誤作動へと繋がります。

更年期症状の一部は脳の誤作動から起こると東洋医学では考えます。

◆鍼灸治療では

脳の興奮が起こる背景は人によって様々です。

そのため具体的にツボを挙げることは難しいので、大きな括りで施術の方向性を書いていきます。

＊体をリラックスさせる

＊首肩頭の凝りや張りを取り除く

＊自律神経を安定させる

脳は自律神経の中枢であり、脳の興奮が体を固まらせて、「凝り」や「自律神経の乱れ」、「末梢神経の興奮(痛みや特殊な感覚など)」が生じやすくなります。そのため上述した３つをメインに施術を行いながら個々人の状態や症状に合わせてツボを付け加えていきます。

◆最後に

脳の誤作動は、日常生活に影響を及ぼすことは少ないですが、積りに積もると厄介な状態になりやすく、脳の興奮を抑えるのに時間がかかります。これは脳が誤作動することが当たり前になってしまうからです。

脳の興奮を落ち着かせるためには「施術」や「脳の興奮になるような生活習慣の改善」、「思考の転換」など様々なことを総合的に行う必要があります。

総合的に行う必要があるとはいっても、環境によってはそれが叶わないこともあると思います。その場合、施術でその悪循環を断ち切る必要があります。環境を変えるのが難しい場合、選択肢の一つに鍼灸治療を組み込むことをお考え下さい。

参考になれば幸いです。