◆はじめに

患者さんの中には、病院での治療と鍼灸治療を併用されている方がいらっしゃいます。そうした方から時折、薬の服用についてどう思われますか？というご質問をいただくことがあります。

病気の種類や状態によっては、どうしても必要な薬もありますし、対処療法的に使われている薬もあります。そのため、薬の服用について一概に良し悪しを語ることはできませんので、そのような時には、私が鍼灸の臨床を通して感じた、「薬とどう向き合うか」という私なりの考え方をお話しするようにしています。

この記事は薬を「止める」ことを勧めるものでも「継続する」ことを推奨する内容でもありません。あくまでも中立な考え方の一つとして参考にしていただけたら幸いです。

◆薬の服用にマイナスなイメージをお持ちの方

薬は飲み始めたら、ずっと飲み続けなければいけなくなるのではないか？と不安に思われる方は少なくありません。もちろん今ある症状の状態によって異なりますが、症状改善に向けて何もしなければ、飲み続けることになることもあるかもしれません。

しかし、症状が辛ければ薬を服用し、まずは症状を落ち着かせるということは、「今」という時間をストレスなく過ごすためには大切なことであり必要なことなのです。

その上で、生活習慣の改善やストレスの軽減、身体の使い方に気を付ける等々、症状に応じて必要な改善を図ることで、薬の服用に囚われない生活を送れるようにしていく。

つまり症状に対して短期的に薬を使い、中長期的に薬以外の方法で症状の改善を図るようにする、薬は症状の悪循環を断ち切るものと捉えてみてください。

◆辛いからつい薬を飲み続けてしまう方

反対に、症状が辛いから薬を飲まないと生活ができないという方もいらっしゃいます。

上述したように、今という時間をストレスなく過ごすためには、薬を服用することは必要なことなのですが、長期化すると「身体への弊害」や「薬が効きにくくなる」ということが起こり得ます。実際に、鍼灸の臨床ではこうした方は珍しくないのです。

薬の服用を長期継続されている方は、今は薬が効いているし、先のことは分からないからとりあえず飲み続けたいという考えの方もいれば、薬を長期服用していることに対して不安を感じてはいるものの、「薬を服用しなくて済むようになるために、いったい何をすればいいのかわからない」と思っている方もいます。

何をしたらよいのか分からない状態になっている場合、症状の長期化や複雑化によって、体にとって良いことをやってもなかなか改善が見られない方がほとんどです。こうなると、大抵ご自身が想定している以上に、症状の改善には時間がかかります。

ご自身は中距離程度に思っていたのが、実はフルマラソンだったというくらい、状態の認識に差があるため、なかなか症状の改善が見られないことで、セルフケアや治療を中断してしまうことも多いです。まずはゆっくりじっくりマラソンするイメージで取り組み、悪循環を断ち切る第一歩にしていただければと思います。

◆最後に

薬の服用にはメリットデメリットがありますが、薬を使わないこともまた然りです。

鍼灸の臨床を通していえることは、短期的な薬の服用はメリットが強いですが、長期的な薬の服用はデメリットの方が強くなる場合が多いように感じます。

もし常用的にお薬を使っている方がいらっしゃいましたら、薬を使わなくするために何ができるのか考えてみてはいかがでしょうか。