現代社会ではスマートフォン・パソコンなどの普及により、昔に比べて目を酷使することが多くなりました。その影響で眼精疲労を持つ方が増えています。今回は眼精疲労に対する東洋医学・鍼灸の考え方について書いていきたいと思います。

◆ものを見る仕組み

眼球は目に映る映像を脳に伝える感覚器です。

眼の器官にはそれぞれ役割があり、カメラに例えると、

・角膜と水晶体は「レンズ」

・虹彩は光を調整する「絞り」

・網膜は「フィルム」の役割を担っています。

①    水晶体を支える、「毛様体という筋肉が伸び縮みすること」で水晶体の厚みを変え、ピントの調節をして「物や画面の文字など」に焦点を当てます。

②    光の調整やピントの調整で得られた映像を網膜に映し、視神経を通して脳に伝えます。

③目の表面が乾かないように、まばたきをするたびに涙が出る仕組みになっています。涙は目の表面に水分や栄養を補給し、目を潤して保護する役割を担っています。

これら①～③の機能が連動することで、「ものを見る」ことができます。

◆眼精疲労とは

目を使う作業を続けることにより、眼の痛みやかすみ、充血といった眼の症状だけでなく、全身に疲労症状が出現し、休息や睡眠をとっても十分回復しない状態を「眼精疲労」と呼びます。

ピントを調整する「毛様体」と光を調節する「光彩」は自律神経によって支配されているため、目を酷使し疲れてくると自律神経が乱れ、全身症状も現れると考えられています。

反対に自律神経が乱れることで、目のピント調節機能(毛様体や光彩)に影響が出る方もいらっしゃいます。

また、休息や目の使用頻度を下げることにより目の症状が緩解するものを、「疲れ目」と呼びます。

 【小まとめ】

【眼精疲労（慢性症状）】=【目の症状】+【休息しても緩解しない】＋【全身症状(自律神経症状)】

【疲れ目（一過性の症状）】=【目の症状】+【休息することで緩解する】

◆眼精疲労の主な症状

◆眼症状

目が痛い、重い、まぶしい、かすむ、乾き、ピントが合わない、充血、まぶたがピクピクする、まばたきが多くなる、など

◆全身症状

全身症状は主に【筋肉系症状】と【自律神経系症状】に分かれます。どの症状が出現するかは人によって違いますが、主な症状は以下の通りです。

【筋肉系の症状】
・頭痛(緊張型)
・首肩こりや痛み
・背中の張りや凝り
・食い縛り、歯ぎしり

など

【自律神経系の症状】
・頭痛(片頭痛)
・吐き気
・めまい
・疲れやすい
・疲れが抜けない
・イライラ感
・寝た気がしない
・喉の異物感・違和感
・動悸
・呼吸が苦しい

など

◆東洋医学・鍼灸による施術目的

鍼灸による施術目的は、主に以下の３つに分けられます。

①　首肩・目の周りの凝りに対するアプローチ

眼精疲労をお持ちの方は、自覚の有無に関わらず、首肩・顔面部周辺の筋肉の凝りがあります。【筋肉が固くなる→目の調節機能に影響】しますし、反対に【目の調節機能が低下する→筋肉に影響して固まる】という流れもあります。この凝りを軽減することで、「眼精疲労」を改善に導く目的で行います。

②   自律神経へのアプローチ

眼精疲労をお持ちの方は、上述したように全身症状を持っていることが多いです。先ほど述べたように「眼精疲労から全身症状へ」、または「全身症状から眼精疲労へ」移行するパターンがありますので、施術により自律神経の安定を図ることで、「自律神経」や「眼精疲労」に良い影響を与える目的として行います。

③　なぜ眼精疲労が起きたのかを分析

やむを得ない事情(仕事など)があって眼精疲労が起こっているのだと思いますが、施術以外で変えられることはないのか？他にも生活の中で「目」や「自律神経」に影響を及ぼすことはないのか？などを分析・カウンセリングしていきます。よくある例としては、

・ストレス
・睡眠不足
・睡眠の質
・目的のないPC・スマホの閲覧
・上述した要因の蓄積

など

◆最後に

現代の生活では、パソコンやスマートフォンは必要不可欠な存在といえるかもしれません。しかし、目の使用過多が中長期的に続くと、心身に悪影響を及ぼします。便利なものであるが故に、上手くコントロールするのは難しいと思いますが、身近にあるものだからこそ、電子機器との距離を上手にとることをお勧めします。この記事を見てくださっているということは、眼精疲労にお悩みなのではないかと思いますので、電子機器を使用するメリット・デメリット、必要な閲覧なのか？ただ何となく閲覧してしまっていないか？などについて、この機会に一度考えてみてください。参考になれば幸いです。