◆はじめに

寒さ厳しい冬から、少しずつ暖かい季節へと移り変わる時期になりました。夏から秋にかけて体調を崩す方が増えるのと同様に、冬から春にかけても、体調を崩す方や、崩すまではいかなくても体調が優れない、という方が一定数いらっしゃいます。

夏から秋に起こる不調、冬から春に起こる不調、どちらも季節の変り目に起こるという意味では同じですが、じつは症状に違いがあります。今回は春特有の症状について、東洋医学的な観点から説明していきます。今までの臨床経験に基づく私の解釈が入っていますので、参考程度に見ていただけたら幸いです。

◆東洋医学からみた春の特徴

春という季節は、一年のサイクルのうち「動き始め」の時期です。

寒い時期から徐々に暖かくなってくると、動・植物の活動は冬に比べて活発になります。(イメージとしては、動物が冬眠から目覚めて動き始める・植物は芽をだす・人間は朝、布団から出やすくなる（笑）、みたいな感じです)

ところが、この動き始めの調整が上手くいかないと、春の不調になると考えられます。

では、動き始めの調整ができないのは何故かというと、東洋医学でいうところの「気」が原因です。

「気」とは、物体を動かすエネルギーのようなものと考えていただけたらと思います。

◆春の特徴と気の関係　

上述したように、春は「動き」がでる季節です。

そして、この動きの性質は「上に向かう」や「外に向かう」、「軽さ」という特性があります。

この特性が身体に現す傾向として、

＊上に向かう：上半身に多い(頭・首肩、胸、背中など)

＊外に向かう：身体の表面に近い症状

＊軽さ：軽い症状、短時間、または様々な部位に移動する

そして、これらを症状に落とし込むと以下のようになります。

◆春に起こりやすい症状

【身体の上部症状】

めまい・ふらつき・顔面部のけいれん・耳鳴り、動悸類、など

【身体の表面症状】

皮膚の痒み、神経痛様症状、皮膚の知覚異常(感覚が鈍い、ビリビリ・チリチリする、何かがはっている感覚など) 、悪風(風を嫌う・ゾクゾクするなど)

【メンタル症状】

不安感・焦燥感・落ち着かない

ソワソワ・ざわざわ・サーっ、スーっとする感じ・込み上げる感じ、など

衝動が抑えられない、など

【独特表現の症状】

下から上に上がってくる感じ、身体の内側から外側に何か向かっていく感じ、など

◆春に体調を崩しやすい人のタイプ

体調を崩しやすい方は、東洋医学的に大きく以下の３つのタイプに分けられます。

【血虚(けっきょ)タイプ】

血虚には「からだ血虚」と「こころ血虚」に分けられます。

「血(けつ)」とは栄養素であり、各器官(筋肉や皮膚)を潤す成分でもあります。また、こころ(精神)の栄養素でもあると東洋医学では考えます。「虚(きょ)」は不足の意。

・からだ血虚は【身体の上部症状】【身体の表面症状】が出現しやすい

・こころ血虚は【メンタル症状】【独特表現の症状】が出現しやすい

【ストレスタイプ】

ストレス系は気の調整を乱します。不規則、突発的に症状を起こしやすい。

【上向きタイプ】

上に昇るタイプ。のぼせ・ほてり・怒りっぽい・ストレスの爆発・高血圧・思考疲れ・頭が休まらない、食生活乱れ、など。頭部の症状が出現しやすい。

※重複もあります

◆最後に

冬から春にかけては、季節(気圧・気温差)の影響以外にも、日本では環境の変化(転勤・異動・入社・卒業・入学・引越など)が多い時期です。つまり「季節の変り目」＋「環境の変化」によって、体調を崩しやすくなるのだと思います。自覚の有り無しに関わらず、季節の変り目に体調を崩す方がいらっしゃいましたら、それは身体からのサインだと思います。参考にしていただければ幸いです。