患者さんが鍼灸院に行ってみよう、治療を受けてみたいと思うのは、ご自身の症状が手に負えないと感じたとか、病院で診てもらったけれど改善しなかったという場合が多いようです。

 症状というのは急に出現することは稀で、本症状が出る前に「何らかのサイン」を身体から発しているものです。この「何らかのサイン」はいわば、身体からの「警報・警告」といえます。

 誰にでも当てはまることですが、ご自身の身体からのサインに対して、最初は「過小評価」してしまいがちです。つまり、何らかのサインが発せられても、「ちょっと疲れているだけ」、「動けるから今は問題ない」などと心身のケアや休養というものを先延ばしにしてしまい、そのまま走り続ける、という方が大半なのです。

 そしていよいよ症状が出現してから自分で何か対処しようとしても、既に体調は下り坂に入っていることが多く、症状に変化がない、または悪化していくという経過を辿ります。これが冒頭で書いた「症状が手に負えなくなった時」です。

 もちろんご自身が一番、「自分の身体や心の大切さ」をわかっていらっしゃると思いますが、その大切さが身に染みてわかるのは、もしかしたら体調を崩した時なのかもしれません。

 ご自身の心身はあなた以外、代えがきかないものなので、心身から発せられる「何らかのサイン」に気づいたら、耳を傾ける時間を作りましょう。

「何らかのサインに耳を傾ける時間」は、言うなれば「心身との対話」に他なりません。

どうして身体や心はこのようなサインを出しているのだろうか？と疑問を投げかけ、体力的に無理はしてないだろうか？精神的に無理はしてないだろうか？と、ご自身の生活をふり返る時間にしていただけたらと思います。

 何らかの治療を開始する前はもちろん、施術や治療を受けてからも、そうした対話の時間を毎日少しでも取ることで、ご自身の心身の状態ときちんと向き合うことができ、症状を未然に防ぐことができたり、症状を改善に導くことができたりするのではないかと思います。

 いついかなる時も、ご自身の心身状態にいち早く気づけるのはあなた自身なのです。参考になれば幸いです。