胃腸症状には様々なものがありますが、その原因となる病気には「機能性ディスペプシア」、「過敏性腸症候群」、「逆流性食道炎」、「ストレス性胃炎」などがあります。

そして人によって、この「症状の種類」は素より「症状の出現する規則性」や、「症状が出現した要因」に違いがあります。この違いの部分に着目して病態を捉えるのが、東洋医学の考え方です。

 今回は胃腸症状を「現代医学的な病名から分類する」のではなく、「症状・兆候から東洋医学的に病態を分類する」ことについて書いていきます。

今現在胃腸症状でお困りの方に、別の視点から説明できればと思います。

◆胃腸症状の分類

東洋医学の専門用語は難しいので、分かり易い言葉を使っていきます。

胃腸症状は、「パワー不足」、「逆流」、「停滞」、「未消化」、「食べ過ぎ」と、大きく５つのカテゴリーに分けられます。それらについて各々説明します。

１． パワー不足

胃腸の消化する力が弱くなり「内容物を下へ送り出せない」、「消化が遅い」などにより、内容物が停滞してしまうような状態です。

【パワー不足になる要因】
疲労、自律神経の乱れ、ストレスの長期化、水分を飲み過ぎる、冷たいもの食べ過ぎる、湿度の影響(梅雨、夏場、夏～秋にかけて)など

【具体的な症状】
食欲が湧かない・胃もたれ・腹痛・腰背部痛・食後眠い・げっぷ・悪心・嘔吐・胃酸が込み上げる・腹部膨満感・下痢・泥状便・便秘など

２．逆流型
口から入った飲食物は本来下へと流れていきます。しかし何らかの影響で、下へのベクトルが上に向いてしまう状態です。

【逆流になる要因】
ストレス、自律神経の乱れ、暴飲暴食、呼吸が浅い方、自覚せず食べ過ぎる、食欲がないのに無理に食べる、など

【具体的な症状】
嘔吐・胃もたれ・胸やけ・げっぷ・胃酸が込み上げる・みぞおちの痛み・腰背部痛など

３．停滞型
胃の蠕動運動が働かない状態です。
※蠕動運動とは、食べ物をすり潰し消化するための運動のこと。

【停滞になる要因】
ストレス、自律神経の乱れ、呼吸が浅い方、自覚せず食べ過ぎる、食欲がないのに無理に食べる、など

【具体的な症状】食欲が湧かない・胃もたれ・張ったような腹痛・悪心・腹部膨満感、食べるとすぐにお腹いっぱいになりお腹が空きやすい、など

４．未消化型
胃腸の消化吸収が上手く行われずに、便まで到達する状態です。

【未消化になる要因】
ストレス、自律神経の乱れ、冷たいもの、お腹の冷え、睡眠不足(寝入りが悪い・中途覚醒。夢をよく見る)など

【具体的な症状】下痢・泥状便・水様便・下腹部痛・お腹の冷感・胃がキリキリ痛む・急に腸がキュルキュル痛む、など

 ５．食べ過ぎ
食べる量が多いことで胃腸症状を起こすもの。

【食べ過ぎになる要因】
大きく２つに分類します。

１．純粋に食べ過ぎている：食べ過ぎが習慣になっている(いつもお腹いっぱいまで食べる)、ストレス食い、など

２．自覚せず食べ過ぎる：詳細はこちらの記事から→自覚のない食べ過ぎ

【具体的な症状】
食欲が湧かない・胃もたれ・胃の不快感・悪心・腹部膨満感・えずく・むくみ、など

◆状態把握

胃腸症状にも様々なパターンがあるため、当院では病態把握をしっかり行った上で施術方針を決め、治療計画を立てて、生活指導をいたします。また複数のパターンが絡むこともあり、この場合もしっかりとお話を聞いたうえで、慎重に分析することが大切です。

◆最後に

鍼灸や東洋医学は「現代的な病名」も参考にしますが、「病名から施術方針」を決めるわけではありません。施術方針を決めるにあたって大事なのは、その方の「症状・兆候からどのような病態（上記の分類）が身体に起こっているのか？」です。参考になれば幸いです。