◆はじめに

鍼灸院にお越しになる方の中には、「息苦しさ」や「息切れ」、「咳」といった呼吸器症状にお悩みの方が一定数いらっしゃいます。

しかし呼吸器症状に対してどのような鍼灸施術をするのか、なかなかイメージしづらいのではないかと思います。

今回は「呼吸器症状に対する東洋医学・鍼灸の考え方」や「何を目的に行うのか」について書いていきたいと思います。

呼吸器症状という範囲が広い題材ですので、ご自身の状態・症状に当てはめながらみてください。

 

 

◆前提として

お悩みの呼吸器症状が「慢性」でも「急性」でも、まずは病院を受診してください。

呼吸器症状は様々な疾患によって起こります。

病院を受診した上で、もしお悩みの呼吸器症状について

・変化がない

・原因不明である

・検査では著しい変化がないのに症状が悪化・頻発する

などがあれば鍼灸もご検討ください。

 

 

◆どんな疾患・症状でお越しになるのか

【疾患】

・気管支喘息

・気管支拡張症

・咳喘息

・寒暖差アレルギー

など

 

【症状】

・呼吸が苦しい

・咳が止まらない

・痰が多い(※感染症由来と思われる痰・血痰は除く)

・喘鳴(ヒューヒュー・ゼーゼーなど)

・喘息発作の頻度が多い

など

 

 

◆東洋医学・鍼灸では

症状がどんな病態によって起きているのかによって施術の目的・方針は異なります。主に大きく２つの目的・方針に分けられます。

 

①呼吸筋に対するアプローチ

呼吸器症状をお持ちの方は「咳」、「呼吸苦しい」などが長期間または頻繁に起こっていることが多く、以下のようなことが起こります。

【咳の悪循環の例】

　　咳
　　↓
呼吸筋が緊張
　　↓
何度も繰り返す
　　↓
呼吸筋の過緊張
　　↓
症状を形成

 

【呼吸が苦しい悪循環の例】

呼吸が苦しい
　　↓
使いやすい呼吸筋を使う
　　↓
使いやすい呼吸筋の過緊張
　   or
使わない呼吸筋は機能低下
　　↓
症状を形成

 

この場合、鍼灸施術では「呼吸筋の緊張」や「呼吸筋の機能低下」によりうまく使えない状態になってしまったことへアプローチを行います。

 

また筋肉は「過緊張」や「機能低下(筋肉が上手く使えていない状態)」になると、自律神経系に影響することがあり、「天候による症状の出現・悪化」、「季節の変り目での出現・悪化」などを起こすこともあります。

 

②自律神経系へのアプローチ

気管支は自律神経によって支配されており、

交感神経優位時(活動時)には気道が広がり、

副交感神経優位時(リラックス時)は気道が狭くなります。

 

この気道の特性上、呼吸器疾患をお持ちの方は以下のようなことが起こりやすくなります。

 

ⅰ、生理的な自律神経の変動

上述したように、気管支は自律神経に支配されており「リラックス時は気道が狭くなる」という働きがあります。

つまり、夜間睡眠中などリラックス時には生理的に気道が狭くなり、

・咳などの発作

・睡眠中の苦しさ

・苦しいことによる副次反応の出現
(起床時の疲れ・睡眠中うなされる・追われる夢など)

が出やすくなります。

 

ⅱ、自律神経の乱れ

自律神経は

・天候などの外的要因

・睡眠不足・疲労などの肉体的ストレス

・感情などの精神的ストレス

など、

様々な要因によって乱れを生じ、気道に作用して症状を起こします。

 

 

 

◆最後に

東洋医学・鍼灸で行えること、考えられることについて書いてみました。

冒頭でも書きましたが、呼吸器疾患は病院(現代医学)がメインになります。

しかし病院や現代医学で対処できない症状などがあることも確かです。

ですから、「症状が悪化している」または「頻発している」などお困りのことがありましたら、対応策の一つとして鍼灸施術も考えてみてください。

参考になれば幸いです。