◆はじめに

お小水に関係する症状のお話は、以前「過活動膀胱と鍼灸」という記事を書きました。「過活動膀胱」は、蓄尿(尿を溜めておく)が難しい病態で、今回の「排尿困難」は、尿を出す機能が弱くなっている病態です。排尿困難の症状を出現する病気は様々あるため、まずは泌尿器科などでしっかりと鑑別をしてもらってください。

今回の記事は、排尿困難の元となる病気がないにも関わらず排尿困難が起こる場合、東洋医学・鍼灸治療の見立てではどの様なことが考えられるか？について書いていきます。詳しい排尿困難の病態に関しては、専門のクリニックや病院のホームページなどをご参照ください。

◆排尿困難の病態

排尿困難とは、おしっこをする際に「力を入れないと出ない状態」や「全くおしっこがでない状態」のことをいいます。排尿困難の原因は大きく二つに分けられます。

【神経因性膀胱】

排尿に関する神経の問題によって、おしっこが出づらくなります。

・脳では脳血管障害など

・脊髄では脊髄損傷や脊髄腫瘍など

・末梢神経ではヘルニアや糖尿病など

【尿道への物理圧迫】

おしっこの通り道である尿道が圧迫を受けることで尿が出づらくなります。

尿道が圧迫を受ける要因として、前立腺肥大、腫瘍、結石などがあるようです。鍼灸院では、このような要因の判別はできないため、まずは病院を受診されることをお薦めしております。

◆排尿困難と鍼灸

では、どのような方が鍼灸治療によって病態の変化が見込めるかというと

①　上記の病態がないにも関わらず、排尿困難の症状がる方

②　上記の病態と排尿困難との因果関係がない方

②について補足説明をいたしますと、

・前立腺の肥大が尿道を圧迫するほどでもないのに尿が出にくい

・前立腺が肥大する前に尿が出にくい

・検査で糖尿病と診断される前から尿が出にくい

など

排尿困難は何らかの原因があって初めて、尿の出づらさという症状を起こすため、排尿困難の原因となる症状が出ていない排尿困難は、他のことが原因として考えられる可能性があります。

◆東洋医学では

では、原因がないにも関わらず排尿困難が起こる場合、東洋医学ではどのように考えるか、ということについて書いていきます。

①湿熱(しつねつ)

排尿に関する湿熱とは、尿が濃いという風に考えていただけたらと思います。

尿が濃いということは、尿がドロドロとしているため尿道を通りにくくなり、排尿が困難になるということです。

湿熱を形成するルートとして「胃腸関連」、「水分代謝」、「ストレス」に加え、慢性化というのがキーワードです。

②膀胱の力が弱い

蓄尿時に膀胱は「膨み」、排尿時に膀胱は「縮む」ことで膀胱の役割を果たします。

排尿時の、膀胱が縮む力が弱くなることで尿を押し出せなくなり、排尿困難になると考えます。

③尿道括約筋の問題

膀胱の出口には、内尿道括約筋(ないにょうどうかつやくきん)と外尿道括約筋(がいにょうどうかつやくきん)という、巾着袋の開口部の緒のようなものがあります。

これら括約筋には特徴があります。

・内尿道括約筋は自分の意思で調節できない筋肉(尿が溜まると緩む、膀胱に尿がなくなると締まる)

・外尿道括約筋は自分の意思で調節できる筋肉(おしっこを我慢するときに使われる)

今までの経過や思い当たることなどを伺わないと判断できませんが、尿道括約筋の可能性がある場合、「自律神経の乱れ」、または「トイレを我慢」する状況が多いなどが考えられます。

◆最後に

どの症状でも同じようなことが言えますが、身体は良い方にも悪い方にも適応しようという働きがあります。そのため尿が出づらくなっても、ある一定程度までは身体は対応しようとしますが、その限界が近づくと、新たなサイン（不調症状）を送り続けます。こうなると、身体を良い方に向かわせるまで時間がかかってしまうので、異変を感じたのであれば早めに病院を受診してください。特に原因がないにも関わらず、症状が続くようでしたら鍼灸治療もご検討ください。参考になれば幸いです。