〒240-0022 神奈川県横浜市保土ケ谷区西久保町15 グランディシンヤ201
天王町駅から徒歩3分
◆はじめに
鍼灸の臨床では、さまざまなお悩みを抱えた方がいらっしゃいます。
・長年の症状に悩まれている方
・妊活で結果が出ずにいる方
・何をすればよいか分からず、鍼灸にたどり着いた方
など千差万別です。
そうした方々と向き合う中で、多くの患者さんからある感情を感じ取ることがあります。
それが「焦燥感」です。
お悩みの症状を改善させるには、さまざまなアプローチが必要だと当院は考えております。
今回は、そのアプローチの一つである感情のコントロールについてお話しします。
◆焦燥感とは
焦燥感とは、焦りと不安が入り混じり、イライラして心が落ち着かなくなる不快な精神状態のことを指します。
鍼灸の臨床でいえば、「この症状を早く取り除きたい」、「この不快感を消し去りたい」、「早く結果が欲しい」といった気持ちが当てはまります。
この気持ちを持つこと自体は大切で、むしろ行動を起こすための原動力にもなります。
しかしこの感情が一人歩きしてしまうと、逆に妨げとなり、遠回りする(回復を遅らせる)ことがあります。
その理由について説明します。
◆遠回りになる理由
理由は大きく二つあります。
一つ目は「方向を変えてしまう」こと、二つ目は「一貫性が失われてしまう」ことです。
例えば、東に向かうのが正しいにもかかわらず、不安になって北へ進路を変えてしまえば、目的地に着くまでに時間がかかるか、たどり着けなくなります。
同様に、目的地(症状の寛解や治癒)を目指して、正しい方向(治療方針)を進んでいたのに、焦燥感が強くなり、今行っていること(治療計画)や現在の状態に不安を感じ、進んでいる方向を信じられなくなってしまうと、目的地にたどり着けなくなってしまいます。
また、一貫性が失われると、あれこれと手を出しては途中でやめることになり、取り組みが積み上がりません。
さらに、焦燥感は身体そのものにも影響します。
焦りや不安といった精神的ストレスが続くと、自律神経のうち交感神経が優位な状態に傾きやすくなります。
交感神経が優位な状態では、筋肉の緊張が高まり、末梢の血管が収縮して血流が低下するうえ、睡眠や消化といった回復に関わる働きも抑えられます。
その結果、焦燥感そのものが、身体が回復しにくい状態をつくり出してしまいます。
◆なぜ焦燥感が出てしまうのか?
人によって異なりますが、主な原因の一つは「自分が思い描いていたものと違う」、言い換えれば「想定外の連続が起きている」ことです。
具体的には、次のような考えをされている方が多くいらっしゃいます。
・この期間くらいで良くなるだろう → 良くならない
・少しずつ変化が出てきている → それでも、もっと早く良くなりたい
・症状に波がある → 一喜一憂する
このように、ご自身が「思い描いていたシナリオと違う」と感じることが焦燥感につながります。
ここで忘れてはいけないのが、回復の過程で症状に波があるのは自然なことだ、ということです。
身体は一直線に良くなるのではなく、良い時期と悪い時期を繰り返しながら、徐々に上向いていくことが多いものです。
そのため、一時的に症状がぶり返したとしても、それだけで「悪くなった」と判断する必要はありません。
◆ギャップを修正するには
まず、「頭で思っていること」と「身体が変わる反応」には差がある、という考え方を根底に持つことをお勧めします。
そのうえで、欲求や期待だけを先走らせるのではなく、身体の状態から現在の位置を把握することが大切です。
「焦燥感が強い方」と「感情の波が少ない方」とでは、判断の順番に違いがあります。
・焦燥感が強い方:希望・欲求が先に立ち、身体の反応による判断は後回しになる
・感情の波が少ない方:希望・欲求を持ちながらも、身体の反応をもとに判断している
ただし、言葉では理解していても、実際には実践できていない方も少なくありません。
これは頭で理解するだけでは不十分で、繰り返し実践することで身につくものです。
そのため、一定の訓練が必要になります。
◆当院の取り組み
「その気持ち(焦燥感)をなくしてください」とお伝えしているわけではありません。
上述した身体の反応を優先して判断できるよう、一人ひとりに課題をお出しします。
課題は人によって異なりますが、例えば次のようなものがあります。
・身体の使い方を習得する
・考え方を見直す
・負荷になっていることを洗い出し、減らす
・生活習慣を改善する
・筋肉をつける(継続と時間を要します)
・筋肉の柔軟性をつける
・症状に対する認識を改める
では、「症状に変化が出ない方」や「変化が緩やかな方」は、課題ができていないということなのでしょうか。
そう考える方もいらっしゃいますが、けっしてそうではありません。
人によって「フェーズ(症状のレベル)」も「身体の変化のスピード」も異なるため、他の方と比較することは得策ではありません。
大切なのは、過去のご自身と比べて「できるようになったこと」や「認識が変わったこと」を積み重ねていくことです。
◆最後に
今回は、鍼灸の臨床で多く見られる焦燥感について、その分析と向き合い方を書きました。
焦燥感は、「頭が思い描いていること」と「現実の身体の状態」との間にギャップがあるときに生まれやすい感情です。
お悩みの症状を良くしたいという気持ちはとても大切です。
そして、その気持ちのエネルギーをご自身の課題に注ぎ込むことで、身体が少しずつその気持ちに追いついてきます。
この考え方が参考になれば幸いです。