◆肩の構造

肩は、身体の関節の中でも複雑な動きをすることができる関節の一つです。複雑な動きをするために不安定な構造をしていて、様々な関節・筋肉が連動することで肩関節を動かしています。

・前後・横に腕を持ち上げる動き

・手のひらを裏表にする、肩の軸回転が伴う動き

・頭を洗う・ブラジャーを留めるなど複合した動き

・ボールを投げる・サーブするなどの複雑な動き

日常生活やスポーツをする際に痛みなく肩を動かせるのは、各関節の正しい動きや各筋肉の伸び縮みが、上手く連動してくれるからなのです。

◆五十肩(肩関節周囲炎)とは

肩関節は、骨・関節以外に筋肉・腱・靭帯・関節の動きを良くする袋(関節包)などの軟部組織で構成されています。肩周辺の軟部組織に炎症が起こり、痛みや関節の可動域制限を特徴とした状態を、五十肩と言います。経過や痛みなどによってステージが変わります。

【炎症期】：動作痛だけでなく、安静時にも痛みがあり、肩の可動域制限が強く、夜間痛が出現することもあります。

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【拘縮期】：炎症が収まり、関節が固まっている時期。主に肩の可動域制限と肩の動作時痛

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【回復期】：肩の痛み・肩の可動域制限が徐々になくなってくる時期

過去の治療例からみると、炎症期がなく、拘縮期から始まる五十肩の患者さんも結構いらっしゃいました。鍼灸の臨床でみるタイプは、炎症が落ち着いている拘縮期から回復期あたりです。鍼灸治療では、いかに拘縮期間を短くして関節拘縮させないかが大切です。

◆要因

１、巻き肩

肩が内側に入ってしまう状態：PCやスマホの継続操作、育児(抱っこなど)、家事など

２、肩甲骨の位置

姿勢が悪い方や肩こりが強い方は、肩甲骨が正常な位置より外側や上側によっていることが多いです

・悪い位置での固定

巻き肩や、肩甲骨が正常でない位置で固定されると、肩関節を動かした際に負荷がかかりやすくなります。※肩の動きが悪くない方でも、巻き肩や猫背など、肩甲骨を悪い位置にすると肩関節の動きが悪くなります。

・良くない状態の積み重ね

負荷がかかる→小さな炎症→軟部組織が固くなる・・・この繰り返しで肩関節の固まりが形成され、痛みがでます。

 何も自覚なく出現した場合は、このようことが考えられます。

中には、肘をついた状態で横になって数時間過ごしたら肩が動かなくなったなど、発症原因は様々です。

◆意外と放置されがち

腕が上まで上がらないけど気にするほどではない、軽い痛みがあるけど大したことない、などと、日常生活に支障をきたすレベルではないため軽視されがちです。上述しましたが、五十肩は各部位の連動が上手くいかないことで、関節胞や靭帯、筋肉などが摩耗し、小さな炎症を繰り返します。小さな炎症の積み重ねが、徐々に肩を固めていき、気づいた時には肩が動かない、痛い、となるわけです。

◆五十肩になってしまったら

痛みや可動域の範囲によっても変わってきますが、まずは痛みを取り除くことをお勧めいたします。痛みが続くと、肩関節周辺の軟部組織の癒着が起こります。癒着が長期間続くと関節の動きが戻らなくなる可能性があります。関節拘縮(固まり)が起きていると、関節の可動域はすぐには元に戻らないので、まず疼痛緩和が大切になるのです。

 上記のように、肩関節への負荷が長く蓄積されることが五十肩の下地を作ります。可動域制限や痛みが強い場合、数回の治療で良くなることはありません。大切なのはしっかりと治療計画を立てて痛みを取る、痛みの出ない範囲で肩関節の可動域上げていく、この積み重ねが大切です。